夜ってどうしてこんなに寂しい気持ちになるのだろう。

どこか言葉に出来ないような心に穴の空いた感覚につける名前があるなら教えて欲しい。

夜の9時、私は自室でベッドに名転がりながら、母から貰った小さなパンダのぬいぐるみに話しかけた。

「今日も蒼河様がマナーレッスンを邪魔してきたの、酷いでしょ。もう少しで言い負けちゃう所だったんだよ?」

きっと昼間の私だったら「言い負ける」なんて弱音は絶対に吐かないだろう。

「あんな勝負、勝てる気がしないよー……」

私はパンダの顔に自分の頭をぐりぐりと押し付ける。

「『冷たい王子様』のはずなのに全然冷たくない時もあって……でも、たまに冷たい目をして底が知れないの。本当の蒼河様のこと、私は何も知らないのかもしれない」

だから、蒼河様の弱点を知ることが出来るかもしれないこの勝負に乗ったのだ。