「あともう少しで通常業務に戻れます」

私はマナーレッスンをしながら、蒼河様に目もくれずにそう言い放ったのに何故か蒼河様の嬉しそうな笑い声がかすかに聞こえる。

そして、私の頭を蒼河様がぽんっと軽く叩いた。







「待っている」







誰にでも優しいようで、それでいて誰とでも一線を引いている雰囲気を感じられる蒼河様は社交界では「冷たい王子様」とも呼ばれている。

人当たりは良いのに、どこか踏み込ませてくれない蒼河様に嫉妬した女性たちがつけた名前だった。

冷たい王子様は何故か私に甘く接する。





「どちらが本当の蒼河様なの……」





ついそう呟いてしまった自分の声が耳にこだましたように感じだ。