冷たいはずの王子様は少女にある勝負を仕掛け、甘い溺愛を注ぐ。

それから私は通常業務に加え、合間をぬって最低限のマナーレッスンを受ける毎日が続いた。

マナーレッスンを受けている私をたまにからかうようにやって来る蒼河様を上手くあしらう日々。

「広葉。マナーレッスンはそれくらいでやめて、通常業務に戻れ」

「マナーレッスンはやめません。私のマナーが下手だった場合、恥をかくのは主人である蒼河様です。それに蒼河様の世話は他のメイドに任せてあるはずです」

「お前のマナーが下手であろうと俺がフォローするから大丈夫だ」

「そんな自分の失態を私が許せると思いますか?」

はっきりと鋭くそう言い放った私に、蒼河様がため息をついている。

「まぁ、広葉が妥協(だきょう)する訳ないよな」

「まだこの屋敷に来て一ヶ月だというのに、私のことをよく分かって下さっていて嬉しいです」

「お前の印象は強烈だからな。それに出会った時から嘘くさかった」

私の強がりを見破り、「嘘くさい」と言い放つのはこの世界で蒼河様くらいだろう。

しかし、何故か出会ってすぐに蒼河様が私を気に入ってくれたのも事実だった。