日ノ本時代男子

「まず、この場所……悠久邸(ゆうきゅうてい)とでも呼びましょうか。この場所は普通の人には見えませんし、入ることも出来ない不思議な場所なんです」

​他の濃すぎる擬人化男子達と一旦別れ、私は明治さんの後ろを歩いていた。

最初に案内された広い応接間には、長い高級そうな木製テーブルを囲むように、背もたれの高い椅子がずらりと並んでいる。

壁一面には、天井に届きそうなほど巨大な本棚があり、歴史書や古文書がぎっしりと詰まっていた。

​「そして、次にこちらが、みんなが普段のんびり過ごしている談話室になります」

​ガチャリと扉を開けて案内されたのは、先ほどの応接間とは打って変わって、どこかアットホームな雰囲気の部屋だった。

小さめのテーブルと、座り心地の良さそうな大ぶりのソファがいくつか配置されており、部屋の奥にはゴロゴロと寝っ転がれるように畳(たたみ)の小上がりまで用意されている。

改めて室内を見渡してみると、談話室と言うだけあって、棚にはチェスや人生ゲーム、将棋やトランプ、さらには最新の格闘ゲームまで、あらゆるボードゲームや娯楽が揃えられていた。

「あ、美空ちゃん」

「待っとったばい」

「縄文くん、弥生くん!」

​ソファの並ぶスペースにいたのは、昨日知り合ったばかりの縄文くんと弥生くんだった。二人とも、私を見つけるなりパッと顔を輝かせてニコニコと大きく手を振っている。

縄文くんにワシっと手を掴まれた途端、反対側の手も明治さんに掴まれた。

縄文くんの反対側の手は弥生くんが握っている。

四人仲良くお手々を繋いだ、ら。

視界がぐにゃりと歪んだ。

✳✳✳

「着いたよ」

​縄文くんののんびりとした声に、ハッと目を開ける。

さっきまであったはずの、豪華な悠久邸の壁やソファは跡形もなく消え去っていた。

代わりに目の前に広がっていたのは、青々と生い茂る巨木と、見上げるほど高い大自然の青空。耳を澄ませば、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

「ここは……どこ?」

「縄文時代だよ」

「ウソォ!?」

私はすんっと腰が抜けたようにその場にしゃがみ込んだ。

頭の中は、な、何で!?っていう疑問符でいっぱい。これって、タイムスリップってこと!?

「何でタイムスリップできているんだろう……?」

「たいむすりっぷ?あぁ、時間旅行!厳密には違うんですよ。分かりやすく説明するとですね、僕達の記憶を元に再構築しているんです。実際の歴史に影響は出ないので、安心して下さい」

う〜んと唸っていた私の心情を読み取ったのか、明治さんが説明してくれた。

「じゃー気を取り直して、近くにムラがあるからそこ行こう」

縄文くんを先頭にして、森を抜けると、集落のような場所についた。

藁(わら)で造られた大きな家。あれは確か……何だっけ?

「あの家は竪穴式(たてあなしき)住居(じゅうきょ)。地面を掘り下げて床を作り、その上に柱を立てて屋根を付けた簡易的な家。夏は涼しく、冬は暖かいよ」

縄文くんの案内で、近くのムラにお邪魔することになった。