日ノ本元号男子

1923年(大正12年)
全壊した家屋からは炎が出ており、黒煙が昇っている。
大きな炎の塊みたいな獣を何とか(しず)めようと狩衣姿の陰陽師達が必死に食い止めてくれているが、厄災には効き目がない。
「下がって!あとは俺が引き受ける!」
すっと(さや)から抜き取った刀を厄災に向けた。刀を持つ手が震える。
(俺にできるのかな……)
その元号の化身である自分しか、厄災は倒せない。ここで本災(ほんさい)を倒せなかったら、国民や人家の被害がより増えるだろう。
(いや、やるしかない)
「みんなが繋いでくれた日ノ本の時代を、俺の代で終わらせる訳にはいかない!」

「―――こんな話で良かった?」
カウンターチェアに座りながらお汁粉を食べている大正が、令和に向けて問いかけた。
「凄いね……大正くんって」
「鎮圧はできたけど……その後の後処理が大変だったんだよね〜。壊れたインフラ整備とか」
大正が顔を青ざめながら遠い目をした。どうやら当時のことを思い出しているようだ。
「うわー、大変そう」
令和は口を手に当てながら驚きの声をもらし、密かに尊敬した。
大正12年、つまり大正が十二歳の時に大きな厄災を鎮圧したことになる。とても自分にはできない所業だと令和は思った。
「でも、大人の令和っちも似たようなもんでしょ?」
「うーん……そうだけど」
令和の手は微かに震えている。
「一番怖いのは、一時とはいえ持ち場から離れてる状態なんだよね。自分の一つの判断で大勢の人を傷付けてしまうかもしれないって考えたら……怖くて」
「……そっか」
大正は餅を口に運び、お汁粉を飲み干す。
「話も終わったから俺はもう行くけど―――グッドラック!」
親指を立て、ドヤ顔をする。
「大正くんって無駄に発音が良いね」
「ひと言余計だよ〜」
令和は大正と別れると、明治にお礼を言って未来に帰っていった。