日ノ本元号男子

思い出せ、思い出せ私!
確か私は歴史と文芸が好きなだけの、部活も目立つ特技もない、取り立てて特徴のない平々凡々を絵に描いたような女子中学生だったはず......。
「さぁ、みなさん待っていますよ」
黒いコートに身を包んだメガネの男性が私の方を振り向く。
じゃあ、何で豪華そうな建物に連れて来られているんだっけ......!?
広々としたアプローチの向こうに、重厚な建物がそびえ立っていた。
宮殿なのか城なのか、とにかくその規模は広大だ。四階建ての砂糖菓子の様な純白の外壁にはアーチ型の半円の窓がずらりとはめ込まれている。
「外からマシンガンをぶっ放なしても内部には傷一つない程の堅牢(けんろう)な造りなんですよ。まぁ、他の人には見えませんが」
今日も良い天気ですねと話すような軽さで、物騒なことをさらりと言うメガネさん。
(わー、すごーい。あれ、ドキドキするような非日常って意外と不安しかない。漫画の主人公ってすごいなー......)
連れて来られた部屋は、思わず言葉を失うほど豪華だった。
吹き抜けのエントランスの天井には、シャンデリアがぶら下がっている。階段の手すりはとてもよく磨かれているのか木がすべすべだし、廊下にも高価そうな骨董品の数々。
「あの......メガネさん」
「どうしましたか?」
「もしかして私、知らず知らずのうちに国家秘密に触れちゃって、今から殺されてしまうんですか......?」
「何でそんな発想になるんですか!?」
メガネさんがツッコんだその刹那(せつな)
「君が期待の新入りくんか!」
誰もいないはずなのに、部屋の中から男性の声が聞こえてきた。
「め、メガネさん!!お、お化けが......!!」
「お化けじゃないです。あと、外套(がいとう)を引っ張らないで下さい......」
何かあったらメガネさんを盾にしようとして、必死に背中にしがみつく。
すると、上から人が降ってきた。
「改めまして、俺の名前は奈良。よろしくなっ、若人(わこうど)!」
「変な人が降ってきたぁ......!」
「ぐぇ......」
メガネさんを盾にして隠れる。
「ここにいる人達は全員、『元号』の化身なんですよ」
「元号......?」
ニコリと人当たりの良い笑みを浮かべるメガネさん。
「メガネさんも......?」
「ええ、僕は明治。アジアの列強を目指して欧化政策を取り入れていました」
メガネさん......いや、明治さんに続き、赤毛の男の子が名乗る。
「おりゃあは稲作文化が生まれた、弥生ばい!」
ニコッと熊本弁を話す弥生くん。身長は私より小さい。
「......いやいや!!そんな元号の化身ですって言われても、理解できないよ。それに何で私を呼ぶんですか?」
(もしかして、日本の元号VS私......!?)
「戦いません」
呆れたように明治さんがツッコむ。
「それは、若人が―――」
何かを言いかけた奈良さんをバインダーで叩く明治さん。