日曜の朝。
昨夜の澪の告白から、一晩明けて。

しずくはまだ少し夢見心地のまま、澪の部屋のソファで目を覚ます。
毛布をかけたまま、薄い朝の日差しに包まれていた。

(しずく・心の声)
(夢じゃ……ないよね)


そっと視線を横に向けると、
キッチンの奥で澪がカップにコーヒーを注いでいる。



(澪)
「おはよう。……よく寝られた?」

(しずく・ぼそっ)
「……はい。あの、昨日のこと……」

(澪・やわらかく)
「覚えてるよ。“好き”って、ちゃんと伝えた。
……夢、じゃないよ」


マグカップを差し出す澪。
受け取る指が少し触れて、しずくはまた顔を赤くする。

(澪)
「それに、もう今日から恋人でしょ? 名前、呼んで?」


(しずく・ぎこちなく)
「な、名前……?」

(澪・笑って)
「呼び捨て。
ほら、“澪”って。昨日、あんなに甘えてたくせに」

(しずく・赤面)
「だ、だってあれは熱に浮かされてて……!」


澪がゆっくりと距離を詰める。
キッチンカウンターを挟んで、ふたりの間はもう30cm。

(澪・低い声で)
「……俺、君の声で名前呼ばれるの、すごく好き」


しずくがそっと目をそらしながら、
ぎゅっとマグカップを握る。

(しずく・小声で)
「……澪」


そのたった一言で、澪の表情がほどける。
一歩近づいて、しずくの頬にふわりと手を添える。

(澪・目を細めて)
「……かわいすぎる。
その声、ずっと俺だけのものにしたい」

(しずく)
「もう……朝から甘すぎです……」


澪が、そのままそっとおでこを重ねる。
ふたりの距離はゼロ。
吐息が混ざるほど、近い。

(澪)
「……キスしてもいい?」

(しずく)
「……はい」


目を閉じるしずくに、澪がそっと唇を重ねる。
やさしく、時間をかけて、確かめるように。

キスのあと。
静かに澪の腕の中にしずくが抱き寄せられる。

(澪・低くささやく)
「もう離したくない。
……朝から君に触れてないと、落ち着かない」

(しずく)
「……私も、です。
こんなに澪のことばっかりになるなんて……」

ぎゅっと抱き合うふたり。
朝の日差しが差し込む部屋は、恋人になったばかりの甘さに満ちていた。

それでもまだ、照れは残る。
朝食を作る横顔に見とれ、
名前で呼ぼうとして──やっぱり言えなくて、後ろから服の裾をつまむしずく。

(澪・気づいて)
「……しずく?」

(しずく)
「……“澪”って、今日あと10回くらい言えたら……
恋人らしくなれますか?」

(澪・微笑して)
「100回でも、1000回でも言って。
ぜんぶ、俺が甘やかすから」