それは、神崎からの一本の電話から始まった。 「赤木さん。もしよかったら、今度の日曜、兄の仕事場に来てみない?」 「えっ……お兄さんの……?」 「髷を結ってる現場。お弟子さんにお願いして、見学させてもらえるように頼んでみた」 「……いいんですか? そんな、貴重な場面を……」 「うん。……赤木さんが、“相撲を好きでいてくれる人”だから、兄も安心してる」 「……!」 そう言われただけで、胸の奥がじんわりと熱くなった。