——神様。これは夢ですか。
社内一のイケメンと名高い神崎先輩が、よりによってスー女の自分に「その取組、俺も好き」って……。
澪はしばらく口をぱくぱくさせていた。
「……その、内緒にしてたんです。相撲好きって。誰にも……」
「へえ。なんで?」
「……なんか、ちょっと……変だって思われそうで」
神崎は笑わなかった。ただ、少しだけ眉を寄せて言った。
「そんなことないと思うけどな。俺は、むしろいいと思う。趣味がちゃんとあって、それに誇りを持ってるってことだし」
その一言で、心がじんわりと溶けていく。
優しさの種類が、あまりに深かった。
——あれ? もしかして、私……この人のこと……
恋に落ちる瞬間なんて、案外、こんなにあっさり訪れるものなのかもしれない。
「じゃあさ、」
神崎はテーブルに片手をつき、身を屈めて、澪と視線を合わせた。



