店を出たあとは、自然と駅に向かって歩き出した。 その途中、信号待ちでふと澪が立ち止まる。 「……あの」 「ん?」 「今日は……ほんとうに、ありがとうございました。ぜんぶ、夢みたいで……」 「こっちこそ。……ありがとう。今日、ほんと楽しかった」 「わたしも、です」 ふたりの間に、言葉にならない空気が流れる。 何かを言いたくて、でも言葉にならなくて。 澪は下を向いたまま、手元をぎゅっと握る。