「……し、知ってるんですか? 蒼ノ島」
「うん。っていうか、好きな力士。あんなに脚力とバネのある力士、なかなかいないでしょ。あとあの手首の返し」
澪は、思わず目を見開いた。
——この人、ガチだ。
「……す、すごい。詳しいんですね……」
「うちの兄貴、床山やっててさ。小さい頃から相撲は身近だったんだよね。今はもう別の部屋に移ったけど」
「床山……って、力士の髷を結う……?」
「そう。実家、母が理髪店してて父が床山なんだ。だから小さな頃から見てたってだけだけど」
(あまりにドラマみたいな展開すぎて、息ができない……)



