「……それにさ」 「はい?」 「赤木さんが、心から楽しそうに見てる顔、俺……すごく、好きだから」 「……っ」 耳の奥まで熱くなって、何も言えなくなる。 それでも心のどこかで確かに思った。 この人といると、私の“好き”も、胸を張っていいんだって——そう思える。 そして、ふたりはそのまま、両国国技館へと歩き出す。 初めての観戦デートが、静かに幕を開けようとしていた。