神崎が玄関をノックし、ひょいと顔を出すと、中から現れたのは、大柄で髪を綺麗にまとめた、職人然とした男性だった。
「よお、圭吾。おお……今日は連れ付きか?」
「兄貴、この子、うちの会社の後輩。スー女だっていうから、連れてきた」
「スー女! いいねぇ! よく来たね、お嬢ちゃん。俺が神崎の兄の“床峰(とこみね)”ってもんだ」
「と、床峰さん……! は、初めまして、赤木と申します……!」
「礼儀正しいな〜。最近のスー女ちゃんは、ちゃんと筋が通ってて気持ちいいわ。中入って」
「えっ、でも……」
「ちょうど髷結いの練習してたとこだから、ちょっと見てくといいよ。な? 圭吾」
「……見てけよ。せっかくだし」
それは、澪にとって——初めて見る“裏の相撲”だった。



