観戦前日、澪は会社帰りにデパートで浴衣を買った。
明日、神崎と並んで両国に立つ。
その事実が、夢のようで、何を見ても浮かれてしまう。
「……赤木さん、ほんとに行くの?」
社内の同期・友梨がぽそっと聞いてくる。
「う、うん……一緒に、観に行く約束、してて……」
「……いいなぁ。神崎さん、うちの部署で一番レアキャラだよ? 女子人気トップ、でも全然プライベート明かさないし。彼女とかいるのかさえ、誰も知らないって」
(……私も、知らない)
それなのに、どうしてこんなに近づいてしまったのだろう。
神崎先輩のことを知るたびに、どんどん「好き」が大きくなっていく。
——私、もう……隠しておけないかもしれない。



