春は、香りとともに。




[惟道side]

 名前を持たない香が、
 初めて“誰かのため”に焚かれた日

 その香を記した帳に、
 誰かがそっと名を添えていた

 言葉にしない想いが
 いちばん深く、記憶に残るのだと
 ようやく、気づいた