春は、香りとともに。




 「志野子さん」

 「はい」

 「この香記録は……私の原点かもしれません。
  けれど、それ以上に、あなたとの記録を、これから増やしていきたいと思っている」


 静かに告げると、志野子はわずかに瞳を揺らした。
 だが、何も言わず、そっと頭を下げた。

 彼女もまた、その言葉の重みを、深く感じ取っていた。