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布地は、惟道が用意してくれた淡い鼠色の綿麻だった。
控えめながら、織りに艶があり、涼やかな手触り。
採寸のため、志野子は香の間に文机と座布団を移し、布と定規、帳面を用意した。
「では、こちらにお座りいただけますか」
惟道は静かに頷き、座布団の前に正座した。
着物の襟元を少しだけゆるめ、首筋が露わになる。
その一瞬の変化に、志野子は息をのんだ。
(……落ち着いて。これは、仕立てのため)
定規を取り、肩幅を測る。
次に、袖丈、背丈、腰回り。
どれも着物を通しての採寸だが、指先がわずかに惟道の肌をなぞる瞬間が、何度かあった。
お互いに、言葉は少なかった。
でも、空気がやけに澄んでいて、心臓の音が響くように感じられる。



