春は、香りとともに。




 しばらくして、私は先生の肩に額を預けた。


 「来年も、その次の年も……また春が来たら、ふたりで桜を見ましょうね」

 「ええ。きっと見ましょう」

 「着物も完成しましたし、また仕立てます。お花見に、お弁当も作って……あ、でも、私はおにぎりくらいしか上手く……」


 言いかけた私の唇に、先生の人差し指がふれた。


 「おにぎりが一番です。……できれば、梅干し入りで」

 「ふふ、わかりました」


 目が合った瞬間、先生がふわりと微笑んだ。
 その笑顔に、胸がきゅんとしぼんでいく。


 私はそっと唇を重ねた。
 今夜は、自分から。

 先生の瞳がゆっくりと閉じられ、その腕の中に私は包まれていく。

 吐息と鼓動が重なり合い、布団の中に、誘われる。
 何度も、名前を呼び合いながら、ぬくもりを確かめ合うように、静かに、甘やかに――。