春は、香りとともに。




 「……わたしを、置いていったくせに」

 声に出すと、涙が一滴、指先を伝った。だけど、手紙をもらえたことが嬉しかった。

 ため息を吐くと志野子は手紙をそっと胸元に仕舞い、目を閉じた。
 あの日から、ずっと心の奥に沈めていた感情が、ようやく浮かび上がってきた。