春は、香りとともに。





 惟道は、彼女の髪にそっと手を添えた。
 その手は、何かを誓うように、静かにそこに置かれたまま……やがて、志野子の呼吸が穏やかになっていく。


「い、今……志野子さん、好きって……」


 思い出したら胸が熱くなるのを感じた。触れたくなる感情を我慢して惟道は、そっと瞼を閉じた。
 今はまだ、これでいい。今夜は、これで十分だ。