春は、香りとともに。





 「……あなたは、笑顔の方が……ずっと、似合っています」


 その一言に、志野子の手が止まる。
 そして、じわじわと頬が熱を帯びていった。


 「……先生」

 「……すみません。……でも、そう思ってしまったのです。あなたが笑うと、わたしまで嬉しくなって」


 言葉にしたあと、惟道自身が少し恥ずかしそうに目を伏せる。
 赤くなった耳先が、焼き菓子よりもずっと温かそうだった。