春は、香りとともに。




 「こちら、いただけますか?」


 そう店主に声をかけて、志野子はそっと手拭いを懐にしまった。


 (わたしばかり、いただいてばかりだったから……
  これくらいの贈り物なら、さりげなく渡せるかもしれない)