春は、香りとともに。





 惟道は、手袋を掌の上でそっと広げてみた。
 見慣れた黒い布が、静かな灯の下で柔らかく揺れる。


「この縫い目……あなたの手ですよね」

「……はい。あまり編み物は得意というわけじゃなくてそれに……器用ではないので、曲がってしまって」

 「いえ、とても綺麗です」


 その言葉に、志野子は思わず視線を落とした。
 頬がほんのり赤くなっているのを、惟道はふと気づく。