春は、香りとともに。




 「……先生」


 志野子の声は小さく、かすれていた。
 けれど、それでも続けた。


 「そんなふうに、私を……見てくださって、ありがとうございます」


 胸の奥が熱く、甘く、きゅうっと締めつけられた。
 この人の言葉が、こんなにも嬉しいなんて――


 (私……本当に、恋をしてしまったのだわ)



 志野子は、そう自覚してしまった瞬間、ふいに涙が溢れそうになるのを、袖でそっと隠した。