もう二度と会うつもりはないけれど、それでも感謝している。

結局私を受け入れてくれる人は誰もいなかったのだと理解出来たから。

だから会社に響き渡るあの声が聞こえた時、私は頭が真っ白になった。



「あれ、琴ちゃん?」



振り向けない。

怖くて振り向くことなんて出来ない。

それでも声の主の足音はコツコツと私に近づいてくる。

「琴ちゃんだよね?」

顔を覗かれて初めて私は三年ぶりにあの人の顔を見た。

そんな私たちの近くに別の課の社員がやってくる。

「酒井さん、桐屋(きりや)さんと知り合いですか?」

私が答えられない代わりに、桐谷くんが「大学の同級生なんです」と返している。