スターリーキューピッド

商品棚から砂糖を取って珠夏に渡し、周囲を確認する。

前方良し、後方良し。学生らしき人……同級生らしき人影もなし。

あとは穏便にこの場を乗り切れば──。


「真中家はのりをまぶすんですね〜」

「お父さんが好きなんだよ。のり味のぼたもちも小さい頃から食べてたらしくてさ」

「へぇ〜。どんな味がするのかしら」

「よかったら、おすそ分けしようか?」


明吾の声に視線を戻すと、珠夏の瞳がキラキラと輝いていた。


「明日空いてるなら、久々に交換会でも」

「するする! いい? お姉ちゃん」

「まぁ……少しなら、いいんじゃない?」


若干顔を引きつらせつつも返答する。

昔からお菓子の交換はやってたから、今回も大丈夫だとは思うけど……。


「じゃあ、明日のお昼にそっちに持っていくよ」

「了解! 楽しみにしてるね!」


あまりにも大声で喜ぶもんだから、冷や汗が止まらない。

ひとまずここは、逃げるが勝ちだ。

はしゃぐ珠夏の腕を引っ張り、そそくさと母の元へ戻ったのだった。