梅雨の季節へと移り変わった6月。

世間では連日の雨で気分が落ち込む人が多いけれど、私たちの町では──。


「もう食べたの!?」

「どんなだった?」

「それはそれはもう美味だったよ。見た目もイメージ写真のまんま。外だけじゃなく中も綺麗で……」


昼休み。うっとりした顔で語るクラスメイトを遠巻きに眺める。


町の名物、惑星ケーキ。

つい先月販売開始され、教室では雨に対する愚痴よりも、ケーキについての感想が飛び交っている。


すると、友清くんが手を挙げて「ねぇねぇ」と口を挟んだ。


「そのケーキって、予約しないと買えない感じ?」

「ホールサイズは予約限定だけど、ミニサイズはお店でも売ってるよ。他のケーキに比べたら値段は張るけど、毎日完売してるみたい」

「そんな人気なんだ。なら早い時間に行ったほうがいいかな」

「そうだな。なるべく午前中、確実に買うなら朝イチ。休日より平日のほうが狙い目だな」

「平日の朝イチね。親戚の姉ちゃんにお願いしてみようっと」