スターリーキューピッド

ドアノブを掴んだまま振り向いたら、「明吾くんから」と珠夏に手招きされた。

ドアを閉めてスマホを受け取り、応答する。


「もしもし。美月です」

【もしもし。悪いないきなり】

「ううん。どうしたの?」

【さっきの爆音で電話かけたんだけど、出なかったから七海のを使わせてもらった。大丈夫だった?】

「うん、みんな無事だよ。今リビングに集まってる」


浮かれている顔を見られないよう、家族に背を向けて話す。

こんな状況下で胸をときめかせるなんて、傍から見たら不謹慎かもしれないけれど。

真っ先に私のことを気にかけてくれたのかと思うと、嬉しくてたまらない。


「心配かけてごめん。ありがとう」

【ううん。じゃあまた、お昼にな】


電話を切ってスマホを返却。

上がっていた口角を元に戻し、平然とした顔で残りの朝食を平らげたのだった。






あれから1時間ほど待ってみたものの、テレビ画面に速報の文字が出てくることはなく。

ネットで調べてみても、それらしきニュースは見当たらなかった。


衝撃が強かったから他の地域でも……って思ったけど、現場が近かっただけで、報道するほどの規模じゃなかったのかな。