スターリーキューピッド

昔から室内遊びが好きだった美月。

たまに鬼ごっこやかくれんぼ、公園の遊具などで遊んでいたけれど、30分もすれば、『疲れたから帰る』と家に戻っていた。

体育の授業がある日も溜め息ついてて。運動会シーズンの時期は、あからさまにテンションが低かった。

そんな美月が、自ら運動を……しかも直接指導してもらうって。

言い方は悪いが、どういう風の吹き回しだよと思った。

けど──。


「多分、俺のせいだろうな」

「筋トレ始めた理由が、明吾にあるってこと?」


整二の問いかけにコクンと頷く。

美月が口にしていた2つの理由からすると、恐らく──。


「小学生の頃、俺と美月が付き合ってるって噂が流れて。否定しても全然収まらなかったから、美月が腹を立てて……」


言葉にした途端、脳内に当時の光景がよみがえる。


『毎日毎日……いい加減にしなさいよ!!』


朝の静寂な廊下に響き渡った怒鳴り声。

クラスメイトの胸ぐらを掴む幼なじみの顔は、今まで見たことがないくらい怒りに満ちていて。

あまりの衝撃に、俺も相手もその場で固まってしまい、先生が来るまで一言も発せなかった。