「ん……ここ、どこ?」

 気がつくと、菜々美は学校の近くにある、昔ながらの劇場の前に立っていた。
 その建物は、赤いれんがでできた小さなホール。
 いつもなら誰もいないはずなのに、今日はなぜか、中からピアノの音がかすかに聞こえてくる。

 (夢界から戻ってきたのに、なんだかまだ不思議なことが続いてる……)

 ふとポケットに手を入れると、“空のカギ”がちゃんとそこにあった。
 金色の羽のかたちをしたそのカギが、ほんのりあたたかい。

 (次のカギが、ここにあるのかも……)

 そっとホールの扉を押すと、中はしんとしていて、どこか空気が張りつめていた。

 ステージの上には、ひとりの女の子がいた。
 白いバレエの衣装をまとい、くるくると回っている――でも、その足取りはどこかぎこちない。

 「……こんにちは?」

 菜々美が声をかけると、バレリーナの女の子はぴたりと動きを止めた。
 その顔はお人形のように無表情で、どこかうつろ。

 「あなたは……このホールの人?」

 「……わたし、踊らなきゃ……踊らなきゃ……でも……ステップが……わからないの……」

 「ステップが?」

 そのとき、ステージの照明がひとりでに光りだした。
 ホール全体が夢のような色に包まれ、菜々美の足元に、光る足あとがぽんっと浮かび上がる。

 【読者クイズ!】

 このホールでは、バレエのステップが光で表示されます。
 でも、正しい順番を覚えないと出口の扉が開きません!

 【ステップ・パターン】
 1 → 3 → 2 → 4 → □?

 さて、つぎに光るステップは?
 A. 2 B. 5 C. 1

 「なにこれ……パズルみたい」

 菜々美は足元の光を見ながら考えた。
 同時に、バレリーナの女の子が、小さくふるえながらこうつぶやいた。

 「まちがえると……ずっと、くるくる、まわりつづけるの……終わらないの……」

 (この子、きっと“夢の中”に閉じこめられてる……)

 菜々美は、そっとステップの番号を読み上げた。

 「次は……Cの“1”!」

 すると、ホール全体がふわりと光に包まれ、バレリーナの少女が目を大きく開いた。

 「……わたし、思い出した。これは、あの日お母さんが作ってくれたリズムだった……!」

 少女はそっと笑い、姿を光の中に溶け込ませていった。
 そのあとに残されたのは、一枚の光るチケット。

 「これは……?」

 そのチケットには、“夢のバレエホールへの招待状”と書かれていた。

 ちょうどそのとき、ホールの奥に新しい扉が現れる。