きらめき夢界ものがたり ~ナナミと四つのカギ~

 最後のクイズ部屋――その扉の前で、プリンセスはぴたりと立ち止まった。

 「ここが“空の間”。この部屋は、わたしにも入ったことがないの。だからちょっと、こわいの……」

 菜々美はそっとプリンセスの手をにぎった。

 「いっしょに行こう。わたしも、ひとりじゃちょっと不安だったから」

 プリンセスは目を丸くしたあと、にっこり笑ってうなずいた。

 扉が自動的にひらくと、そこはまるで空の中に浮かんでいるような場所だった。
 四方の壁はなく、見えるのは青空とゆっくり流れる雲だけ。
 天井には、うすく光る“星のような石”が三つ、三角の形になっていた。

 「ここは……何をすればいいの?」

 菜々美が問いかけると、ふいに空間に文字が浮かび上がった。

 《第4問》
 星の石がつくる“形”にかくされた言葉は?
 A. こころ
 B. なみだ
 C. ひかり

 「三つの石……三角形。かたちの意味……?」

 菜々美はうーんと首をかしげる。
 そのとき、プリンセスがそっとつぶやいた。

 「三つの角があって、ひとつにむかってとがっている形……きっと、それはね、気持ちの向かう先」

 「気持ちの……向かう先……?」

 すると、雲の床の一部がきらきらと光り、歌のような声が聞こえた。

 「悲しみのあとに流れるもの……あたたかくて、透明で……だけど、大切なもの……」

 その声に、菜々美の胸の奥がキュッとなった。
 プリンセスの瞳には、また少し涙がたまっている。

 (わかった……)

 「答えは、Bの“なみだ”」

 その瞬間、星の石が強く光り、三角の中央に金の光があふれだした。

 そして――空間の中央に、ふわりと“そらの宝石”が現れた。

 「……あった!」

 プリンセスがぱっと走り出し、やさしく宝石を抱きしめた。

 そのとき、雲の上の空がぱあっと晴れて、虹がかかった。

 「ありがとう、菜々美。あなたが来てくれなかったら……わたし、ずっと泣いたままだった」

 「ううん、わたしこそ……こんなにだれかに“ありがとう”って言ってもらえたの、久しぶりかも」

 ふたりは笑いあいながら、虹の光の中で手をつないだ。

 そのとき、宝石の光がもう一度まばゆく輝いたかと思うと、空からふしぎな“カギ”が落ちてきた。

 それは、羽の形をした金色のカギだった。

 「これって……!」

 「それが、夢界をひらく“四つのカギ”のひとつ。“空のカギ”よ」

 「じゃあ、まだ三つ……!」

 「ええ。きっと、あなたなら見つけられるわ」

 カギが光るたびに、どこからかページをめくる音が響いた。

 次の舞台が、菜々美を待っている。