きらめき夢界ものがたり ~ナナミと四つのカギ~

 それは、まるで全部が夢だったような朝だった。

 けれど、菜々美のポケットには、ちゃんと「夢の種」が残っていた。
 淡く光るその粒は、見ようとしない人には見えない。
 でも菜々美には、はっきり見えていた。

 (あの旅は、本当だった)

 学校の図書室に入ると、あの日と同じように、陽だまりが差し込んでいた。
 本棚のすみには、今はもう何も光っていない「夢の本」。
 でも、開かなくても、もう菜々美の心にその世界は息づいている。

 「おはよう、菜々美」

 由香里がそっと声をかける。
 その隣には海音、裕樹、有美、コーディ、グレイシー。
 仲間たちは、現実の中でまた出会いなおしていた。

 「ねえ、菜々美」

 グレイシーがにっこりと笑う。

 「あなた、ゆめを持ってる人の顔してる」

 菜々美は照れながらも、まっすぐ言葉にした。

 「うん、物語をつくる人になりたい。誰かの心がすこしでも軽くなるような、そんな話を書きたいの」

 誰も笑わなかった。
 そのかわり、まるで小さな光が生まれるように、みんながうなずいた。

 「それなら、きっと大丈夫だよ」

 海音がそう言って、菜々美に手のひらを差し出した。
 菜々美は自分のポケットから、そっと夢の種を取り出す。

 「いつか、これが芽を出して、わたしの言葉になる気がするの」

 そのとき、図書室の天井がふわりと光に包まれた。
 見上げると、そこに一行の文字が浮かんでいた。

 【最後の読者クイズ】
 あなたの夢は、どこにありますか?

 A. まだ見つけていないけれど、探してみたい
 B. もう持ってる。これから育てていく
 C. わからないけど、心の奥にある気がする

 菜々美は、読み終えて微笑んだ。

 「どれを選んでも、正解なんだよ。だって、夢は“信じること”から始まるんだから」

 そう言って、彼女は静かにペンを取った。
 ノートの一番はじめに、こう書いた。

 “これは、わたしが出会った夢の物語。
 きらめきの中で、見つけた本当のわたしの話。”

 ページは今日も、やさしくめくられていく。