きらめき夢界ものがたり ~ナナミと四つのカギ~

 夢界の空は、再生の光に包まれていた。
 けれど、菜々美の目の前には、最後の選択肢があらわれていた。

 「ナナミ。夢界はあなたを中心に再構築されつつある。
 だけど、あなたが現実に戻るには、どちらかを選ばなければならない」

 案内役の声が静かに響く。

 「ひとつ。夢界にとどまり、この世界を守る存在になること。
 もうひとつ。現実に戻って、夢のかけらを持って生きていくこと」

 夢の本が菜々美の前で開き、ページが静かにめくられる。
 その最後には、空白のページが一枚だけあった。

 「このページに、あなたの選択が刻まれる」

 菜々美のまわりに、これまで出会った仲間たちの姿が浮かぶ。
 プリンセス、バレリーナ、マーメイド。
 そして、由香里、海音、裕樹、有美、コーディ、グレイシー――

 「ナナミ、わたしはあなたと“いま”を生きていたい」

 由香里の声に、他のみんなも次々に想いを伝えてくる。

 「また現実で会おう」「夢を忘れずに進もう」

 菜々美は目を閉じ、深呼吸をひとつ。

 「わたしは……」

 ――選ぶ。現実に戻っても、夢を持ち続ける道を。

 「夢界は、わたしの心にある。だから、この世界をぜったい忘れない。
 そして、夢を語ることを、もう怖がらない」

 すると、空白のページに、菜々美の文字がひとつずつ浮かび上がっていく。

 “わたしは、夢と生きる。”

 その言葉とともに、夢界はやわらかい光に包まれ、すべての風景が静かにとけていった。

 ***

 気づくと、菜々美は図書室の机にもたれていた。

 窓の外は、春の午後。風がカーテンをやさしく揺らしていた。

 夢の本は静かに閉じられていて、その上には、小さな“夢の種”が一粒。

 「おかえり、ナナミ」

 由香里の声が聞こえた。
 顔を上げると、そこにはみんながそろっていた。

 「ただいま。……ううん、これから、ここで夢を育てていくんだよ」

 そう言って、菜々美は夢の種をそっとポケットにしまった。