きらめき夢界ものがたり ~ナナミと四つのカギ~

 目を開けた瞬間、菜々美は自分がどこにいるのか分からなかった。
 ふわふわとやわらかい空気。足元には、もこもこの雲のような床。
 空は青く、どこまでも広がっていて――まるで空の上に立っているようだった。

 「ここ……どこ?」

 まわりを見渡すと、遠くにうかぶお城が見えた。
 金色の塔、羽のような屋根、空にゆらゆらと浮かぶ巨大な花の橋。
 おとぎばなしの世界が、目の前にひろがっていた。

 (夢……これって夢なのかな?)

 だけど、手をほっぺたにつねってみても、痛くない。でも、はっきり感じる。
 風も、においも、光も――全部ほんものみたい。

 そのとき、ふいに空から声が降ってきた。

 「ようこそ、四大夢界へ」

 「えっ、だれ!?」

 「わたしは、この夢の書の案内役。ここは“空の夢界”――君がひらいた本が、夢界への扉だったんだよ」

 声は風にまぎれてすぐに消えたけれど、足元の雲がすうっと形を変え、道をつくった。
 まるで「おいで」とさそわれているようだった。

 (行ってみよう……なにか、大事なことが始まる気がする)

 菜々美は勇気を出して、雲の道を歩き出した。

 ***

 お城の門にたどりつくと、そこには背の高い扉と、しずくのような装飾がほどこされていた。
 でも扉は少しだけ開いていて、中から「しくしく……」と小さな泣き声が聞こえた。

 「……こんにちは?」

 おそるおそる中に入ると、広いホールのまんなかに、青いドレスを着た女の子が座っていた。
 彼女の頭には、小さなティアラ。でもその顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。

 「ううっ……宝石が、宝石が……!」

 菜々美はそっと近づき、ハンカチを差し出す。

 「だいじょうぶ? なにがあったの?」

 「わたし、空のプリンセスなの。でも大事な“そらの宝石”が消えてしまって……
 それがないと、この世界の空がどんどん曇っていってしまうの……!」

 窓の外を見ると、たしかに空の一部がうすぐもりはじめていた。

 「ねえ、お願い。いっしょに探してくれない? 宝石を取りもどさないと、空の夢界が――!」

 菜々美はぎゅっと手を握りしめた。知らない世界、知らない人――でも、目の前で泣いてる人をほうっておけない。

 「うん、わたしでよければ!」

 その言葉に、プリンセスの顔がぱっと明るくなる。

 「ありがとう……! でも、このお城には“からくり迷路”があって、進むにはクイズをとかなきゃいけないの」

 「クイズ……?」

 「うん。正しい答えを選ばないと、道がとじちゃうの。でも、だいじょうぶ。ヒントはかならずどこかにあるから!」

 そのとき、空にキラキラ光る羽が舞い降りてきた。そこには、こんな文字が書かれていた。

 《第1問》
 このお城の中にある“風の間”は、どの方角にある?
 A. 南の階段をのぼった先
 B. 北の地下へおりたところ
 C. 東のバルコニーの奥

 「これがクイズのひとつ。答えを間違えると、同じところをぐるぐる回っちゃうの。正しい場所を探し出して!」

 菜々美は、ひとつ深呼吸をして、答えを考える――