きらめき夢界ものがたり ~ナナミと四つのカギ~

 夢界のゆがみが消えた翌日、菜々美は突如呼び出された。

 「あなたは“夢界の秩序を乱した疑い”で裁かれます」

 広場に設けられた大きな法廷の中央、菜々美はたったひとりで立っていた。
 まわりには、夢界の住人たちが静かに座っている。プリンセスも、マーメイドも、仮面を脱いだもうひとりの自分も。

 「でも、わたし……!」

 「発言は最後に。まずは“記憶の証拠”を提示します」

 空中に浮かび上がるのは、これまでの旅の記録。
 プリンセスが泣いていた空の城。
 踊れなくなったバレリーナ。
 歌を忘れたマーメイド。
 そして塔で試された選択――

 「彼女は夢界に希望をもたらした一方、心の影も引き寄せた。
 それが“夢を否定する存在”を呼び起こしたのです」

 判事役の声がひびく。

 そのとき、裕樹が立ち上がった。

 「それは違います。菜々美は、逃げなかった。自分の迷いとも向き合ってきた」

 由香里も前に出る。

 「わたしは見てきた。彼女が、どれだけ自分の言葉で“夢”を守ってきたか」

 証言は次々に続いた。

 「失敗を知ってる人の言葉って、ちゃんと届くんだよ」
 「夢を見てるだけで、明日が明るくなる。菜々美は、それを教えてくれた」

 会場がしんと静まり返った。

 そして、判事が言った。

 「最後に、本人の証言を。菜々美さん、あなたは“なぜ夢を信じた”のですか?」

 菜々美は一歩前に出て、大きく深呼吸をした。

 「わたし、こわかったんです。夢を語ることも、笑われることも。
 でも、それでも……夢を見てる自分が、いちばん好きだったから。
 失敗しても、ちがっても、自分の声で言葉をつむぐことが、わたしの夢だから。
 だから……信じたかった。今の自分を」

 その瞬間、夢界の空に金色の光が広がった。

 「判決。
 菜々美は、夢界を乱した者ではない。
 “夢を守ろうとした者”である」

 聖堂の中心に、ひとつの扉が現れた。
 それは“夢の記憶”が封じられた場所。次の冒険への入り口だった。