きらめき夢界ものがたり ~ナナミと四つのカギ~

 四つのカギと五人の仲間、言葉のしずくまでそろったはずの夢界に、再び異変が起こった。

 空と海が交わり、バレエホールとサンゴの迷宮がつながってしまう。
 本来あるべき世界が、どこもゆがんでしまっていた。

 「これは……夢界の“秩序”がくずれてる……!」

 裕樹の声が響いたそのとき、霧の中からひとつの影が姿をあらわした。

 長いローブをまとい、顔には白と黒の仮面。
 その瞳は空洞のように深く、何も語らずにこちらを見つめてくる。

 「あなたは……だれ?」

 菜々美の問いに、仮面の者は、まるでなぞなぞを語るように、低い声で言った。

 「夢は美しい。でも、こわれやすい。
 信じるほどに、期待するほどに、裏切られる。
 ならば――夢など、見なければいいのでは?」

 五人の前に、三つの道が現れた。

 「さあ、選べ。進む道によって、夢界の未来が変わる」

 仮面の声が消えたあと、目の前にそれぞれ異なる風景が浮かんでいた。

 【道A】バレリーナたちが止まったまま踊らない、静まり返ったホール
 【道B】マーメイドの歌声が低く、重く響く、不気味な海の底
 【道C】空に浮かぶ塔が崩れかけ、プリンセスがひとりで立ちすくむ空の城

 「どこかひとつしか行けないの?」

 「三つに分かれて調べよう。けど……誰かひとりは、仮面の正体を追って」

 裕樹が提案し、仲間たちはそれぞれ別の道へ進むことになった。

 菜々美は迷った末に、塔のある空の城――道Cを選んだ。

 「プリンセスが、あの場所にいるなら……わたし、行かなきゃ」

 崩れかけた城の上に立つと、プリンセスは菜々美に向かって小さく首を振った。

 「もう、だれも信じられないの。カギも、夢も、希望も……」

 「それはちがうよ。わたしは信じてる。プリンセスが夢界を守ろうとしてきたことも、わたしたちの旅も――全部、本当だから」

 その言葉に、仮面の者がふたたび現れた。

 「ならば、証明してみせよ。
 “夢を信じる選択”を選んだその意味を――」

 空中にクイズが浮かんだ。

 【読者への選択クイズ】
 夢を守るとは、どういうこと?

 A:だれにも見せないで、心の中に閉じこめること
 B:途中でやめても、自分で意味を見つけつづけること
 C:周りに言われた通りに変えること

 菜々美は、まっすぐに答えた。

 「B。夢は途中で変わっても、やめても、なくならない。大事なのは、自分の中で意味を持ち続けること」

 すると、仮面が静かにひび割れ、崩れ落ちていった。

 中からあらわれたのは――どこか菜々美に似た少女の姿だった。

 「わたしは、“夢をあきらめた菜々美”。
 だけど……ほんとうは、ずっとそばにいて、信じたかったんだと思う」

 二人の菜々美が見つめ合い、手をとった瞬間、ゆがんでいた世界がゆっくりと元に戻りはじめた。

 夢界に、再び光が差す。