「その消しゴムを貸してくれたから、彼女はシャーペンについている小さな消しゴムを一生懸命使っていた。2つ持ってるなんて俺には言ってきたくせに」
「......どうして」
どうして知っているの?
あの日ついた嘘は私の中で秘めたものだったのに。
桜塾は忘れ物にかなり厳しくて、先生に見つかると注意を受けて課題を課されることもある。
それでも優しい彼なら私が消しゴムを1つしか持っていないと分かればきっと遠慮すると思ったから。
そうなってほしくなかったからとっさに嘘をついた。
誰にもそのことを言ってないから、彼が知っているはずがないのに....。
「この子は本当に優しい子なんだって。嘘ついてまで人のことを1番に考えられるなんて素敵な子なんだろうって思ったんだ」
彼から紡がれるひとつひとつの言葉がスッと胸の中に入ってきて、温かく流れていく。



