物置になっているある空き教室が私のお気に入り。

そこに入って、私はすぐにスマホを取り出した。

妹に電話をかける。

「なぁに、お姉ちゃん。また電話?」

「いや紗良(さら)、面白いことあったんだって! ていうか、教室で笑いそうでヤバかった!」

私は先ほどの出来事を妹の紗良に話す。

「もうめっちゃシュールでさ! あんなの笑わない方が無理だって! 我慢した私、凄すぎない!?」

「はいはい」

「ちゃんと聞いてる!?」

「聞いてるって。お姉ちゃんがおしゃべりすぎるだけ」

そう言いながらも紗良は案外楽しそうだった。

紗良は私の一個下で高校一年生。

美術系の通信制高校に通っていて、オンライン授業やスクーリングがない時はこうやって私の電話に付き合ってくれる。