国の擬人化達との同居生活

それから数日後。
「キャー、宇轩(ユーシュェン)くん頑張ってー!!」
時雨(シウ)くんカッコイイ〜!」
「キャー!蒼空く〜ん!」
「クロムくん、カッコイイ〜!」
「シャルル様〜!」
「チャーリーくん!カッコイイ!」
「マシューくん、速〜い!!」
「チロく〜ん、ファンサして〜!!」
「ニコライくん、頑張って〜!!」
体育の時間。黄色い歓声が響き渡るグラウンド。
今、目の前では男子のサッカーの試合が行われているんだけど、擬人化男子達は他の誰よりも目立っていた。
さっきから九人共、見事なパスまわしとシュートを決めていて、それを見た女子達は大興奮。
イギリスくんとフランスくん、アメリカくんとロシアくんのペアだけお互いにボールを顔面に向けて蹴っていた。本当に仲が悪いんだぁ、、、。
そして、フランスくんとイギリスくんはサッカーが強い国だからなのか、さっきから自分にまわってきたボールを一度も外さずにシュートしている。
腰が大丈夫なのか心配な中国くんでさえ、シュートを決めることはなくても、相手に的確にボールをパスしている。
「あらま、今日も人気だね」
コートの隅で試合を一緒に観戦していた上野美月(みづき)ことみっちゃんが、感心したように呟く。
みっちゃんは小学校からの友達で、高めの位置でポニーテールに結んでいる元気な女の子。部活は女子バレーボール部に所属している。
「あの九人と同居しているんでしょ?羨ましいわぁ、、、」
そして唯一、私がこの九人(プラス台湾くん)と同居していることを知っている友達なのである!でも、国の擬人化ってことは知らない。
「それにしてもさぁ、チロくんって本当に菜羽のこと好きだよね〜」
「え、そんなことないと思うけど、、、」
「絶対好きだって〜!だって、好きでもない女子のこと『マリア様』って呼ぶ?」
多分、イタリアくんが私のことをマリア様って言うのは、私が彼らの体を作ったからで、、、なんて、言えないよね〜。
なんでだろうね〜と、そんな当たり(さわ)りのない言葉を発する前に、一試合目が終わったイタリアくんがこっちに駆け寄ってきた。
「マリア様!俺の活躍、見てくれていましたか?」
「え、うん」
「マリア様に見てもらっているので、いつもより頑張りました!!」
ニパーっと可愛らしく微笑むイタリアくんに、周りの女子達の黄色い歓声が激しくなった。
「菜羽ちゃん、いつの間に仲良くなったの〜?」
「マリア様だってー!!」
「チロくんって犬系男子だよね〜」
きゃあきゃあと声を上げる。
なんて歓声を聞いていたら、ふと大声が聞こえてきて、、、
「そこ、危ないっ!!」
次の瞬間、サッカーボールが勢い良くこっちに飛んでくるのが見えて、、、
「、、、あ!」
つい声を上げてしまう私。
すると、何処からともなくフランスくんが走って来て、私を(かば)うようにギュッと抱きしめた。
―――トンッ。
飛んできたボールは私に当たることなく、イタリアくんがレシーブで打ち返した。
フランスくんは私からそっと腕を外すと、心配そうな表情で聞いてきた。
「菜羽ちゃん、大丈夫?」
「あ、うん」
「良かった。ところでイタ、、、チロってバレー得意だったの?」
フランスくんはイタリアくんに尋ねる。
「うん。男子バレーボールは世界ランキング二位だよ。女子バレーボールは世界一位!」
「強っ!」
イタリアくんはのほほんと答えた。ちなみに男子バレーの一位はポーランドらしい。
「三人共、大丈夫ですか!?」
「今のはアメリカある」
「ゴメン。大丈夫かい!?」
ボールが飛んできた方から日本くん、中国くん、アメリカくんが走ってくる。ボールを蹴り飛ばしたアメリカくんは薄っすらと目に涙を浮かべている。
「菜羽、本当に何も怪我してないのかい?骨折とか、、、病院に行くかい?日本の救急って何番だった???」
スマホを片手にオロオロしているアメリカくん。
「大丈夫!あと救急車は大袈裟だよ」
「人は簡単に死んじまうんだぞ、、、」
私の肩に手を置き、前後に揺さぶるアメリカくん。
頭がぐわんぐわんする、、、。
「わ、私には当たってないよ、、、!!」
「、、、そうなのかい?」
アメリカくんはフランスくんとイタリアくんを交互に見つめ、二人は頷く。
「僕はマリア様を守る盾になるって誓ったからね」
「アメリカ〜、菜羽ちゃんを揺さぶらない」
すると、その様子を見ていた女子達が口々に騒ぎ出す。
「良いな〜三原さん」
「羨ましい、私にもボールが当たれば良かったのに」
「はぁ、私もチロくんとシャルルくんに守ってもらいたーい」
さらには隣にいたみっちゃんも何故かニヤニヤしていて。
一気にみんなから注目される羽目(はめ)になってしまったので、なんだかちょっと恥ずかしかった。