主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

それでも、私は目を逸らさなかった。

これが、私が望んだことだ。

ただ過去に戻って幸せだった時間をやり直したいわけじゃない。
都合のいい未来を選び直したいわけでもない。

誰かの犠牲の上に成り立つ偽りを、私は許せない。

だから、傷ついても、迷っても――
真実から目を逸らさず、見届ける。

その覚悟を、私はこの胸に刻んだ。

静かに拳を握った私に、隣の柱にもたれたままのユーリが、ちらと視線を寄越した。

その青い瞳に、いつもの軽薄な色はなかった。

「……へぇ。泣かねぇんだな」
「え?」
「いや。泣くか喚くか、どっちかだと思ったんだけどな。
世界に裏切られて、家族にも捨てられて……今さら正義面するには重すぎんだろ」

皮肉めいた言葉だったけれど、その口調はどこか抑えていた。

「……泣くのは、もっと後でいいんです。
今は、前に進まなければ。お母様が……命を懸けてくれたから」
「……へぇ」

ユーリは小さく笑った。

でも、それはいつもの鼻につくような笑い方とは違っていた。
どこか、感心したような、面白がるような――それでも、少しだけ、親しみの滲んだ笑み。

「やっぱお前、お姫様にしては根性あるな。……まあ、悪くない」
「評価していただけて光栄です」
「調子乗るなよ。まだ“及第点”だ」

そう言いながらも、ユーリは再び柱に体重を預け、何事もなかったように話を戻した。

けれど私は、その短いやり取りの中に、彼がわずかに態度を改めたのを感じ取っていた。

私のことを、ただの協力者ではなく――
“同じ物語を知る者”として、少しだけ認め始めているのだと。

その事実に、わずかな希望が灯った。