***
私が袋小路を離れたのは、日が完全に落ちた頃だった。
路地裏をすり抜け、指定された廃教会へ向かう。
風が吹き抜けるたびに、薄いローブの裾が揺れる。
足音はひとつのはずだった――にもかかわらず、微かな気配が背中に貼りついていた。
「……ついてきたの?」
そう呟いて立ち止まると、建物の影から、皮のマントを羽織った少年が現れた。
――エクエス。
まだ傷の癒えぬ体で、息を詰めながらも、確かにそこに立っていた。
「……最初は無視しようと思った。けど、無理だった」
「どうして?」
「お前が“俺を騎士にする”なんて、簡単に言ったからだ」
それは抗議のようでいて、どこかしがみつくような響きだった。
それでも、少年は拳を握り、視線を逸らさなかった。
「だったら最後まで責任取れ。俺を……お前の騎士にしてくれ」
その瞳は、恐れも遠慮もなく、まっすぐ私を射抜いていた。
懇願ではない。執念。
あのとき名を与えられた瞬間から、彼の中で私は唯一無二の“主”になっていた。
私が口を開こうとしたそのとき――
「――へぇ。ずいぶんモテるじゃないか、お姫様」
乾いた声とともに、朽ちた柱の陰から気怠げな少年が現れる。
金髪、青い目、飄々とした空気。
今日の待ち合わせ相手ーーユーリだった。
私が袋小路を離れたのは、日が完全に落ちた頃だった。
路地裏をすり抜け、指定された廃教会へ向かう。
風が吹き抜けるたびに、薄いローブの裾が揺れる。
足音はひとつのはずだった――にもかかわらず、微かな気配が背中に貼りついていた。
「……ついてきたの?」
そう呟いて立ち止まると、建物の影から、皮のマントを羽織った少年が現れた。
――エクエス。
まだ傷の癒えぬ体で、息を詰めながらも、確かにそこに立っていた。
「……最初は無視しようと思った。けど、無理だった」
「どうして?」
「お前が“俺を騎士にする”なんて、簡単に言ったからだ」
それは抗議のようでいて、どこかしがみつくような響きだった。
それでも、少年は拳を握り、視線を逸らさなかった。
「だったら最後まで責任取れ。俺を……お前の騎士にしてくれ」
その瞳は、恐れも遠慮もなく、まっすぐ私を射抜いていた。
懇願ではない。執念。
あのとき名を与えられた瞬間から、彼の中で私は唯一無二の“主”になっていた。
私が口を開こうとしたそのとき――
「――へぇ。ずいぶんモテるじゃないか、お姫様」
乾いた声とともに、朽ちた柱の陰から気怠げな少年が現れる。
金髪、青い目、飄々とした空気。
今日の待ち合わせ相手ーーユーリだった。

