主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

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なんで……。

なんで、あんな目をして俺を見た?
なんで、あんな手を差し伸べた?

何も知らないくせに。
どれだけ汚れてるかも、壊れてるかも知らないくせに――

……なのに、綺麗な声で名前を呼んだ。

「エクエス」って。

たったそれだけのことが、こんなにも、こんなにも――胸を焼く。

嬉しかった。助けてほしかったわけじゃないのに。
名前がほしいなんて、一度も願ったことなかったのに。

でも、呼ばれた瞬間、心がついていかなかった。
ぐちゃぐちゃにされて、空っぽになったままの俺の中に、何かが流れ込んできて。

……怖かった。

あの人がいなくなったら、それも全部、消えてしまう気がして。

初めてだったんだ。
自分が「誰かになってもいい」って思えたのは。
「生きていていい」って、他人の声で思えたのは。

だから……もう、知らないふりなんてできない。

あの人を、失いたくない。