ローブの裾が靴にまとわりつき、歩みに重みが宿る。
振り返ることはなかった。けれど、確かに背中には、あの少年の視線が残っていた。
――エクエス。
そう呼んだときの彼の表情が、焼きついて離れない。
まだ幼いように見えたのに、どれだけのものを諦め、どれだけの理不尽に傷つけられてきたのだろう。怒ることも泣くこともせず、ただ静かに受け入れ、呑み込んで、壊れないままそこにいた。
そんな彼が、私を――“守った”。
私が差し伸べた手に、すがるような、でも誇りを取り戻すような眼差しを向けてくれた。
それが、どうしようもなく――嬉しかった。
打算だけじゃない。過去の自分を重ねただけでもない。
あの瞳に、私は希望を見た。
「騎士なんて、なれるのか……」
あの一言の裏にあった震え。勇気。諦めの中に微かに残っていた願い。
だから、私も応えたかった。名を与えることで、未来を開いてあげたかった。
ラエティティア・デア・ペルペトゥスとしてではなく――
この世界に抗うひとりの人間として。
「……本当に、大丈夫だったかな」
誰にも届かない独り言が、冷たい夕暮れの風に攫われていく。
でも、後悔はしていない。
あの手を取ったことも、その名を贈ったことも。
ただ――願う。
いつか彼が、あの名に相応しい誇りをその胸に宿してくれる日が来るように。
そしてまた、どこかで顔を上げ、私の名を呼んでくれたなら――
私は、何度だって彼の主になる。
たとえこの世界が、何度書き換えられようと。
振り返ることはなかった。けれど、確かに背中には、あの少年の視線が残っていた。
――エクエス。
そう呼んだときの彼の表情が、焼きついて離れない。
まだ幼いように見えたのに、どれだけのものを諦め、どれだけの理不尽に傷つけられてきたのだろう。怒ることも泣くこともせず、ただ静かに受け入れ、呑み込んで、壊れないままそこにいた。
そんな彼が、私を――“守った”。
私が差し伸べた手に、すがるような、でも誇りを取り戻すような眼差しを向けてくれた。
それが、どうしようもなく――嬉しかった。
打算だけじゃない。過去の自分を重ねただけでもない。
あの瞳に、私は希望を見た。
「騎士なんて、なれるのか……」
あの一言の裏にあった震え。勇気。諦めの中に微かに残っていた願い。
だから、私も応えたかった。名を与えることで、未来を開いてあげたかった。
ラエティティア・デア・ペルペトゥスとしてではなく――
この世界に抗うひとりの人間として。
「……本当に、大丈夫だったかな」
誰にも届かない独り言が、冷たい夕暮れの風に攫われていく。
でも、後悔はしていない。
あの手を取ったことも、その名を贈ったことも。
ただ――願う。
いつか彼が、あの名に相応しい誇りをその胸に宿してくれる日が来るように。
そしてまた、どこかで顔を上げ、私の名を呼んでくれたなら――
私は、何度だって彼の主になる。
たとえこの世界が、何度書き換えられようと。

