主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

「お、おい……てめぇ……!」

残りの男たちが動くよりも早く、少年は枷を引きずったまま地を蹴った。
膝蹴り、肘、反転。すべてが滑らかで、淀みなく――そして、静かだった。

数人が、瞬く間に地に伏した。

けれど彼は、誰の顔も見ず、ただ静かに息を吐いた。
その瞳には、どこか諦めにも似た光があった。

「……はあ……やっちまった……」

項垂れた少年に、私はそっと声をかける。

「……助けてくれてありがとう。貴方、名前は?」
「……ねえよ。“商品”に名なんてあるか」
「なら――私が付けてもいい?」

少年が顔を上げる。乱れた暗い桃色の髪。その奥の、左右で異なる白と黒の瞳が、光を宿すように揺れた。

(灰色が混ざった暗い髪に、黒い瞳……レフレクシオ帝国の血が混ざった子……だから奴隷商に……)

「貴方は、商品じゃない。暴力に屈せず、誰かを守る力を持っている。それは、誇るべき才能よ」

私は、彼の手を取った。

「私は、貴方を騎士として迎えたい」
「……俺を?」

ユーリが刺客として送られてきた。私の命は常に狙われていると知った以上、身を守る術が必要だった。
それは確かに、打算だったかもしれない。

けれど、理不尽に傷つけられ、助けを求める声すら踏みにじられていた――その姿は、過去の私と重なった。