主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

ユーリが私の部屋を訪れてから、数日の時が流れた。

太陽が落ちかけた薄明の中、ユーリとの情報交換のために、私は今日ひとりで王都の裏通りにやってきていた。

その路地の奥――どこかで怒鳴り声がした。

「おい、動くなって言ってんだろうが!」
「……や、やめろ……っ」

蹴り飛ばす音。泣き声ではない。低く、押し殺すような呻きと嗚咽。

私は足を止めなかった。迷いもせず、音の方へ駆けた。

辿り着いた袋小路の奥で、男たちが小さな体を囲んでいた。
泥と血に汚れた少年が、地面に伏している。足首には鉄の枷。皮膚は赤黒く腫れていた。

「その子を放して」

私の声が、薄闇を裂くように響いた。男たちが一斉に振り返る。

「……あ? なんだ、お嬢ちゃん。見学にでも来たのか?」
「その子にこれ以上手を出したら、私が黙っていないわよ」
「へぇ、勇ましいね。でも今は“商品”の調教中だ。口出しされる筋合いはねぇよ」

男が嘲るように私へ歩み寄る。

私は――立ちはだかった。
一歩も退かず、その子の前に、迷いなく体を張った。

男の苛立ちは、もはや隠そうともしなかった。

「……いい度胸だな。なら、痛い目見てもらおうか!」

拳が振り上げられた――その瞬間、鈍い音が響く。

「……え?」

男が吹き飛ばされた。

驚いて振り返ると、地面に蹲っていたはずの少年が、男の腹を正確に蹴り上げていた。

身軽な動き。骨格に見合わぬ瞬発力。
細い体なのに、打ち込みには一切の迷いがなかった。