主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

「おい、待て!」

怒声と共に、彼が迫る。

私は扉へ駆けかけて――立ち止まった。

(ダメ。逃げるだけじゃ、何も変わらない)

この人は、本当は敵じゃない。
さっき確かに感じた。“傷ついた者”の気配を。

私は振り返った。震える胸を押さえながら。

「……じゃあ、殺せばいいです。今、ここで」

殿下の目が、わずかに見開かれる。

「……正気か?」
「でも、殺されるなら……本当のことを伝えてから死にたい」

私は胸元にあるお母様の形見のネックレスを握りしめる。

「私は、ペルペトゥス皇女――ラエティティア・デア・ペルペトゥス。過去に、貴方の“反逆”に加担したとして、アドラティオ王家の敵として処刑された女です。けれど、それも濡れ衣でした。そして私もまた、目を覚ましたら時間が巻き戻っていた」

空気が、一変する。

殿下の手の中の短剣が、わずかに下がる。

「……お前も、処刑された?」
「ええ。だから、私も知ってるんです。誰かが“物語”を書き換えたことを。私たちはその犠牲者。そして、“侵略者”が望んでいるのは、私たちの死。恐らく、貴方の今の行動も侵略者の思い通り……」

言葉を重ねるたび、胸の奥が熱くなる。

誰にも言えなかった真実。誰にも信じてもらえなかった秘密。
でも――彼は、笑った。