主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

殿下は気だるげに答え、窓の外へ視線を投げる。
まるで、ここが戦場ではなく、ただの退屈な任務であるかのように。

喉の奥が、きゅうっと締めつけられるのを感じた。

(彼も……回帰してる。私と同じように、死んで、それで――)

だから、私はここで死ねない。
彼に手を汚させたくない。

書き換えられた物語に、私達は呑まれてはいけない。

「……ユリエンス殿下、私の話を聞いてください」
「冗談だろ?」

彼は首をかしげる。けれど、手にした短剣は、わずかに下がっていた。

私はそっと息を整え、視線だけで逃げ道を探す。
扉は遠く、呼び鈴は今使えば彼の警戒心を煽るかもしれない。

(……なら、時間を稼ぐしかない)

「殿下が処刑されたのは、“誰か”に書き換えられた運命の結果ですよね。その運命を、本当に受け入れたいんですか?」
「……俺は俺の運命を狂わせた“侵略者”も、俺を信じなかった国の連中も、誰も許す気は無い。前はお前の暗殺命令は無かった。という事はお前をここで殺せば、前とは違う展開になるだろ」

その目に、一瞬、深い闇が宿る。

彼が一歩、近づいた。

私は寝台の奥へ身を引きながら、背後に手を伸ばす。

(……いける。あとは――)

カツン、と床が鳴った瞬間、私は燭台を掴み、寝台のカーテンを引き裂いた。

「……っ!」

視界が遮られた隙に、私は寝台から飛び降りる。
膝を打ったが、構っていられない。