主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

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礼拝堂の回廊を歩きながら、足取りが少し重くなる。

先程まで隣にいた少女の姿が、胸に残り続けていた。

(君は、誰なんだ?)

強く、優しく、そしてどこか懐かしいーーそんな人だった。

初めて会ったはずなのに、どうしてこんなにも心に引っかかるのだろう。まるで、遠い昔に大切なものを一緒に分け合ったような、不思議な感覚があった。

言葉にすればたった一言、「泣いてもいい」という優しさだった。

けれどその一言が、自分を支えていた仮面をそっと外し、内側の弱さに触れてくれた。

誰にも言えなかった悲しみを、誰かに赦されたような気がした。

(……君は、何かを知っていたのか?それとも……)

考えれば考えるほど、言葉にならない感情が胸に渦巻く。

けれど、それは決して重苦しいものではなかった。ただ静かに、温かく心の奥に灯るものだった。

(……名前を、聞き忘れた)

名前すら知らないのに、こんなにも心に残る人がいるなんて。

ふと、彼女のテネブラエ王家特有の深い紫の髪と深紅の瞳が脳裏に浮かぶ。

(また会えるだろうか)

それが願いなのか、確信なのかは分からなかった。

ただ、どこかでまた出会える気がしてならなかった。

――まるで、ずっと昔に別れた“魂の半身”に、もう一度巡り合ったような。

そんな想いを胸に抱きながら、俺は静かに歩を進めた。