告別式の翌日。
城の一角にある静かな礼拝堂の庭園で、私はひとりベンチに腰掛けていた。
深い紫の髪を風になびかせながら、私は手にしていた白百合をそっと見つめる。
フォルトゥナ・ノクス・アドラティオ――彼女のために供えられた花だった。
(あの場所に私は、どこにも居場所を見つけられなかった)
あの場には「家族」を名乗る者たちが集っていた。けれど、私の知らない誰かの“子供たち”もいた。
特に、あの――紫の瞳を持つ、純白の髪のアルビオン殿下の顔が、何度も記憶の中をよぎる。
(養子ではない、正真正銘の聖下の子供……)
そのとき、ふと足音が近づいている事に気がついた。
顔を上げると、庭園の入口に立っていたのはアルビオン殿下だった。国賓の彼らは告別式から数日ここに滞在すると聞いていたのに、私はすっかり忘れてしまっていた。
聖下を思わせる高貴な顔立ち。純白の髪は朝の陽の光を受けて揺らぎ、紫の瞳には沈黙の影が宿っていた。
葬儀の日から、彼もまた――深い悲しみを背負っているように見えた。
「あ……」
私が立ち上がろうとすると、アルビオン殿下は首を横に振る。
「座ったままでいい。俺が勝手に来ただけだから」
静かに隣に腰掛けると、私達の間に風が吹き抜けた。
「……百合、好きなのか?」
「母が好きだった花なんです。白百合は……“魂の純潔”を表すと……聞いたことがあります」
アルビオン殿下は小さく頷いた。
「俺も……そう、教わった。……君のお母様は、きっととても綺麗な人だったんだな」
その言葉に、不意に胸が締めつけられた。
(貴方も……母を失ったの?)
城の一角にある静かな礼拝堂の庭園で、私はひとりベンチに腰掛けていた。
深い紫の髪を風になびかせながら、私は手にしていた白百合をそっと見つめる。
フォルトゥナ・ノクス・アドラティオ――彼女のために供えられた花だった。
(あの場所に私は、どこにも居場所を見つけられなかった)
あの場には「家族」を名乗る者たちが集っていた。けれど、私の知らない誰かの“子供たち”もいた。
特に、あの――紫の瞳を持つ、純白の髪のアルビオン殿下の顔が、何度も記憶の中をよぎる。
(養子ではない、正真正銘の聖下の子供……)
そのとき、ふと足音が近づいている事に気がついた。
顔を上げると、庭園の入口に立っていたのはアルビオン殿下だった。国賓の彼らは告別式から数日ここに滞在すると聞いていたのに、私はすっかり忘れてしまっていた。
聖下を思わせる高貴な顔立ち。純白の髪は朝の陽の光を受けて揺らぎ、紫の瞳には沈黙の影が宿っていた。
葬儀の日から、彼もまた――深い悲しみを背負っているように見えた。
「あ……」
私が立ち上がろうとすると、アルビオン殿下は首を横に振る。
「座ったままでいい。俺が勝手に来ただけだから」
静かに隣に腰掛けると、私達の間に風が吹き抜けた。
「……百合、好きなのか?」
「母が好きだった花なんです。白百合は……“魂の純潔”を表すと……聞いたことがあります」
アルビオン殿下は小さく頷いた。
「俺も……そう、教わった。……君のお母様は、きっととても綺麗な人だったんだな」
その言葉に、不意に胸が締めつけられた。
(貴方も……母を失ったの?)

