主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

嘘をついたのだ。でもそれは、自分の意志で選んだ道。ペルペトゥスに戻るかどうか――その答えは、今はまだ早いという事だった。

(名乗るに足る存在になってから、もっと力を付けてから……)

聖下は特に怪しむ様子も見せず、小さく頷いた。

「そうか。……よく来てくれた。フォルトゥナも、喜ぶだろう」

聖下はそれだけを言い残し、彼は再びアルビオン殿下たちの待つ方へと歩いて行った。

私はその背中を見送る。白い髪に、遠ざかる紫の瞳。その全てが、自分の父である証であり、そして今は――まだ他人としての距離を保っていた。

叔父様がそっと肩に手を置く。

「……強いな、お前は」
「……そうでないと、何も変えられませんから」

私は、静かに目を伏せながら答えた。

日が沈み、葬儀の全てが終わった後、城の一角にある自室に戻ると、静寂が空間を支配していた。

ローブを脱ぎ、葬儀用の深い黒のドレスから身を解放するように、そっと椅子に腰を下ろす。

窓の外には夜の帳が降り、遠くに王都の灯が揺れていた。

(お母様……見ていてくれましたか)

今日一日、涙は流さなかった。泣いてしまえば、戻ってこない現実がより鮮明になりそうで。

だからせめて、最期までお母様の娘として、誇れるように振る舞いたかった。

その一方で、心には重い石のようなものが沈んでいた。

聖下のことだ。

目の前で、言葉を交わした。けれど、彼は娘である自分に気づかなかった。

(……気づかなかったのは、当然)